日本の香り文化~①薫衣香(くのえこう)
本物と上質を求める大人のためのアロマテラピーサロン「アロマテラピー&リラクセーション Shinoa」のブログにお越しいただきありがとうございます。
台風の影響で、京都では昨夜から今朝にかけて久しぶりのまとまった雨でした。
今後は東日本の太平洋側を東に進む見込みだそうですが、影響を受ける地域の方には被害がありませんように。
さて、私は、自宅から京都御所南サロンまではバス通勤しています。
外国人観光客でバスが混むので、彼ら彼女らが移動しない時間を見計らって乗車するようにしています。
混雑や大きい荷物、マナーなどもですが、匂いも気になります。
コロンをつけることが当たり前の国の人も多いようで、バス車内に色々なコロンがミックスされていてなかなか辛い(-_-;)
香り立ちは湿度と温度に大きな影響を受けます。
湿度が高く蒸し暑い日本の夏に、欧米のコロンは想定外の香り方をしているのかもしれませんね。
ちなみに、コロンをつける習慣が少ない日本は「香水砂漠」とも呼ばれているそうです。
しかし、日本にも豊かな香り文化があります。
とりわけ、紫式部や清少納言の活躍した平安時代。
貴族たちは、植物由来の香料などでお香を作り、独自のブレンドを楽しみました。
香りはまとう人のセンス、財力、家柄までも含めたアイデンティティをうかがわせるものでもありました。
香りの取り入れ方は様々でした。
まずは、「薫衣香」。
衣装に香りを染み込ませる方法です。
心ときめするもの 雀の子飼ひ。ちご遊ばする所の前わたる。よき薫き物たきてひとり臥したる。唐鏡の少しくらき見たる。よき男の車とどめて案内し、問はせたる。
頭洗ひ、化粧じて、かうばしうしみたる衣など着たる。ことに見る人なき所にても、心のうちは、なほいとをかし。待つ人などのある夜、雨の音、風の吹きゆるがすも、ふとおどろかる。
『枕草子』29段
清少納言は、『枕草子』で「心ときめくもの」を挙げるなかで、
高級な香り物を焚いて、一人で横になっている時もなかなか良い。
髪を洗ってお化粧をして、しっかりと良い香りが焚き染められてついた着物を着た時。その時には特別に見ている人がいなくても、心がとても浮き立って楽しくなる。
と、書いています。
『源氏物語』の「空蝉」の巻は、着物に焚きしめた香りが重要なモチーフになっています。
光源氏は方違えで訪れた紀の守の邸で、伊予の介の若い後妻に当たる空蝉を見初め、空蝉の寝所に忍び込みます。
彼女を両手に抱えていこうとしたところに侍女が駆けつけてきます。
侍女は、光源氏の着物に焚きしめた高貴な香りが立ち込めているのを感じて事情を理解するのでした。
「やや」とのたまふに、あやしくて探り寄りたるにぞ、いみじく匂ひみちて、顔にもくゆりかかる心地するに、思ひ寄りぬ。
<訳>(光源氏が)「ああ」とおっしゃるので、駆けつけた侍女が不思議に思って探り寄ったところ、光源氏の香りがあたりに満ちて、顔にまでかぶってくるように感じて、(光源氏だと)思い当たった。
光源氏は、身分違いの人妻を忘れられずに、後日、再び空蝉の寝所に再び忍び入ります。
香りで光源氏の接近に気づいた空蝉は、単衣のみを体にかけ、小袿を残したまま寝所を抜け出しました。
光源氏の衣に焚きしめられた高貴な香の香りが漂ってきたとき、空蝉も侍女も、姿を見ずともそれが誰かを知るのです。
光源氏は、残された空蝉の小袿を持ち帰り、彼女の香りが染みついたそれを自分の衣の下に引き入れて眠るのでした。
同じく平安時代の文学作品『宇津保物語』には、姫君の洗った髪に薫物の香りをたき込める場面が出てきます。
コロンのように、香りを直接素肌に塗るということはない、それも日本流なのでしょう。
次回も王朝人の雅な香り使いについてご紹介したいと思います。
当教室では、
を随時開講中です。
<講義内容>
1.日本における香りの歴史
2.日本人と香り<源氏物語>
3.日本人と香り<香道>
4.日本の国土と香り
5.お香材料と和精油
<和のアロマクラフト作り>
1.練香
2.塗香と香袋
3.置き香と香りストラップ
4.練り香水(ソリッドパフューム)
5.和菓子のアロマストーン
<受講料>
1)コース(5回)でのお申込み
42,800円(材料費+税を含む)全5回(約10時間)
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9,000円(1回)
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