源氏物語と香り~猫と移り香の名シーン
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来春、「和アロマ」に関する新コースを立ち上げるべく準備中です。
テキストも半分くらいできています。
その章の一つが「『源氏物語』と香り」です。
現在、「光る君へ」というNHK大河ドラマが、紫式部を主人公としていて、ちょっとした『源氏物語』ブームですね。
この物語において、「香り」は全編にわたり、重要なモチーフとして描かれています。
以前、受講した玉村文郎氏(同志社大学名誉教授)の講座では、「万葉集以降の代表的な古典文学20点に含まれる嗅覚語彙を、名詞、動詞、形容詞に分けて27種類ピックアップし、それを精査したところ、源氏物語のみで使われている語彙が7種類あり、物語における嗅覚が非常に重要であることを示している」と指摘されました。
今よりもずっと夜の闇の濃かった時代、漂う香りはその人を表すファクターとしてより大きな意味を持っていたことでしょう。
光源氏と女性たちの逢瀬の場面はもちろん、様々な場面で実に効果的に香りが取り入れられていて改めて読むとその巧さに驚嘆します。
物語に香りが加わることで、その情景をよりリアルに豊かな感覚で捉えることができます。
さらに、物語では、香りが、その人の教養やセンス、財力、家柄をも表すものとして描かれています。
物語の中に登場するのはよい香りだけではありません。
風邪を治すために食べたニンニクの臭いのために几帳越しにしか会えないという才女の話。
嫉妬のあまり生霊となり、肉体を離れて相手の女性を痛めつける六条御息所。それを調伏するための加持祈祷に用られた芥子の臭いが、彼女の体に付きまって離れないという話、など。
匂いが加わることで、生々しいまでに物語にリアリティを感じさせます。
『源氏物語』の香りと言えば、光源氏が、娘である明石の姫君が宮中に持参する練香の調合を、ゆかりの女君たち(朝顔の宮、明石の君、紫の上、花散里)に依頼。
優劣を競う薫物合わせを行うという「梅枝」を思い浮かべる方も多いでしょう。
でも、私が最も好きな香りにまつわる場面は「若菜上」です。
光源氏は、晩年に女三宮を妻に迎えますが、彼女の幼さに魅力を感じることができません。
そんなある日、源氏は夕霧や柏木ら若君達を呼んで蹴鞠の会を催します。
夕霧と柏木が階の上で一休みしていたとき、走り出してきた猫が御簾が持ち上げてしまい、柏木は御簾の内にいた女三宮を見て心奪われます。
しかし女三宮は源氏の妻です。
柏木が切ない恋心を慰めるために猫を招き寄せると、猫には女三の宮の移り香のよい香りがして、可愛らしく鳴く様子も、女三の宮に重ねて感じられるのでした。
愛しい人の香りが移ったふんわりと柔らかな猫。
その猫を抱き寄せて顔をうずめて、決して結ばれてはならない人を思う柏木の心。
名シーンだと思うのですがいかがでしょう。
この後、女三宮は柏木との不義の子を宿し、出家。
ちなみに、出家した女三宮の持仏開眼供養の場面の香りの表現もまた見事です。
そして、柏木は罪におののきながら亡くなるのでした。
<日々の出来事>
ゆっくりゆっくりと移動している今回の台風10号。
停滞した地域はもちろん、離れた地域にも大雨をもたらして、被害をもたらしているようです。
8/21(水)に従弟から、「台風が近畿地方を直撃するかもしれないから、備えた方がいいよ」と連絡をもらいました。
それから毎日毎日ハラハラしていましたが、朝起きるたびに昨日と違う予報。
それに伴い予定も次々と変更を余儀なくされて、何だか疲れますね・・・。
皆様、引き続き、気を緩めず大雨に警戒して過ごしましょう。
台風の後は、少し涼しくなりそうでそれだけは嬉しいですね。