橘の開花~昔の恋を思い出す香り
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今日は、葵祭でした!
うっかりして、丸太町通を通るバスに乗ってしまい渋滞に巻き込まれてしまいました。
『源氏物語』で葵上と六条御息所の車争いのあったお祭りです。
車争いでみじめな思いを味わった六条御息所は、その後生霊になり、難産に苦しむ葵上を苦しめるのですが、その時のおどろおどろしい香りの表現が秀逸です。
当教室で開講している
では、そんなお話もしています。
さて、今日は素晴らしい柑橘の花の香りのお話です。
平野神社(京都市北区)の橘の花が咲き始めました。
今年は桜の開花も遅かったですが、橘も例年よりやや遅めのようです。
橘の木の下にたたずむと、高貴な香りに包まれて心洗われるようです。
橘の香は、王朝人にとって、かつて愛した昔の恋人を思い起こさせる香りでした。
「五月待つ 花橘の香をかげば 昔の人の袖の香ぞする」(古今集)
という秀歌がきっかけです。
「和泉式部日記」の冒頭でも、この橘の花がモチーフにされています。
人妻でありながら、身分違いの恋に落ち、そしてその若い恋人に先立たれた和泉式部。
物語の冒頭はこのような描写から始まります。
夢よりもはかなき世の中を歎きわびつつ明かし暮らすほどに、四月十余日にもなりぬれば、木の下くらがりもてゆく。
(夢よりも儚かった為尊親王との仲を、嘆きわびながら明かし暮らしているうちに初夏の四月十日過ぎにもなったので、葉が茂って木の下がだんだん暗くなっていく。)
旧暦の4月10日はちょうど今くらいの季節でしょうか。
亡くなった恋人の弟、敦道親王が「兄宮の恋した人はどうしていらっしゃる」と、香り立つ橘の一枝を届けさせます。
和泉式部は、大胆にも
「薫る香に よそふるよりは ほととぎす 聞かばや同じ 声やしたると」
(橘の香りに亡くなった方を偲んでいるよりは あなたのお声を直接お聞きしたい お兄さまと同じお声なのかどうか)
と、返歌するのです。
敦道親王と式部の、新しい恋の始まりでした。
古事記では、橘は非時香果(ときじくのみ)とされています。
いつでも香りたかい果実、という意味で、この実には尊い生命力が宿ると信じられていたようです。
そのため、京都御所紫宸殿前に橘の木が植えられ、女の子の健康と幸せを願う雛人形にも飾られるそうです。
京都では、平安神宮の大きな橘がよく知られています。
ぜひ、この季節、嗅いでいただきたい香りです。