アロマテラピーの効果効能について~科学的態度で考えるには?
本物と上質を求める大人のためのアロマテラピーサロン「アロマテラピー&リラクセーション Shinoa」のブログにお越しいただきありがとうございます。
皆さまは、アロマテラピーに何を期待されますか?
セラピー=療法ですから、心地よい香りとともに、何らかの効果効能を期待される方が少なくないと思います。
私が所属している(公益社団法人)<strong>日本アロマ環境協会(以下、AEAJ)の公式テキストに、かつては各精油の効果・効能が詳しく書かれていました。
<2003年改定版、2012年改定版、2015年改定版、2019年改定版のテキスト>
例えば、私の手元の2003年改定版「日本アロマテラピー協会」発行のテキスト「精油のプロフィール:ゼラニウム」のページには
「精神と肉体のリズムのバランスを整え」
「不安とうつを鎮め」
「精神を明るく高揚させる傾向」
「心身の緊張により情緒不安定を癒し」
「内分泌系(ホルモン分泌)調整作用に優れていて、生理のリズムの乱れを整えるためや、月経前の不快な症状や、月経痛、更年期障害を和らげるためによく用いられ」
「むくみを改善する働き」
「スキンケア」
と多くの効果・効能が紹介されています。
しかし、そのあたりの表現がかなり慎重になっていき、2015年改定版では、効果・効能は記載されなくなり、植物学的特徴や栽培の歴史、香りの特徴などが説明されているに留まるようになりました。
そして、2019年1月に改訂された現テキストでは、精油のプロフィールの章に、各精油の「Health」「Beauty」に関する効果が記載されるようになりました。
テキストをお持ちの方はご覧いただきたいのですが、その語尾はエビデンスの強度によって書き分けられています。
例えば、以下の通りです。
~という報告があります。
~の作用が知られています。
~の作用が期待できます。
~によいとされて古くから利用されてきました。
各精油について、科学的根拠として採用できる膨大な資料をあたり、公益社団法人として記載できるぎりぎりの効果効能を記載したと、理事長自らが勉強会でおっしゃっていました。
さらに、「研究データ」として関連する研究論文の説明と原著論文のありかが示されるようになりました。
また、テキストに掲載されていない研究データは、冊子やHPで詳しく紹介され、随時更新されています。
これらはAEAJが、科学的態度を重視し、誠実な情報提供をめざしておられるゆえのことかと思います。
では、公式テキストに効果・効能について、このような形でしか載せられない理由はなんなのでしょうか?
それは以下のように考えられます。
①様々な実験によって、個別の効果・効能についてのデータはあるものの、なぜ効果があるのかのメカニズムがまだ解明されていないから
②研究者がジャーナル(専門誌)などに論文として発表しても、それだけで科学的に正しいとは必ずしも言えないから。
つまり、科学的に正しいと言えるには、多くの異なる方法や条件で結果が間違いないことが多くの研究者に認められる必要があり、これには相当の時間がかかります。
そして、①や②の結果、研究者によって広くacceptされた事実が、教科書になっていきます。
このように考えると、個別の研究は深まりつつあるものの、「アロマテラピーの効果・効能は科学的に証明されている」とはまだ言えない段階であると思います。
世代を越えて長く使われ、伝えられてきた精油に効能は確かにあるはずです。
A.「科学的に証明されていること」
B.「まだ証明されていないが、将来証明されると予測されること」
C.「荒唐無稽であること」
をきちんと切り分けて捉える必要がありますが、アロマテラピーに関してはまだ多くがBの段階であると言わざるを得ません。
このようなことを踏まえ、Shinoaのアロマレッスン(講座)では、
「この精油は伝承的使用法としてこのように活用されてきた」
「この精油にはこういう研究データがある」
等、切り分けつつ、お伝えしています。
嗅覚研究は、現在最もホットな研究分野の一つであり、様々な報告がなされています。
殆どが英語で発表される論文をAEAJでは、HP上で紹介もしてくれます。
そういったものも生かしながら、皆様と正しく安全なアロマテラピーを楽しんでいけたらと思います。
同時に、あれに効く、これに効くと安易に語る人や協会には気をつけた方がいいかもしれませんね。