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Shinoa Blog

橘の花の香りに、かつて愛した人を想う

本物と上質を求める大人のためのアロマテラピーサロン「アロマテラピー&リラクセーション Shinoa」のブログにお越しいただきありがとうございます。

 

京都市北区の平野神社で、橘の花が開花しました。
橘の花は、葉の下にひっそりと咲いていますが、その芳しい香りで開花に気づきます。

 

 

アロマ検定の試験対象になる30種類の精油の中に、ネロリという精油があります。
ビターオレンジの花を水蒸気蒸留して得られる精油で、当サロンのアロマ講座受講者さまにも大変人気があります。

橘の花の香りは、このネロリに似つつ、さらに高貴な香りという印象を受けます。

 

右近橘(うこんのたちばな)左近桜(さこんのさくら)と言われ、
平安京の内裏にある紫宸殿の左にあるのが桜。
右にあるのが橘。

京都御所をはじめ、格式のある場所では、これに倣っているとか。

 

平野神社も同様、神殿から見て右にこの橘。
が植えられています。
木に品格というものがあるならば、別格ではないでしょうか。

 

 

「五月待つ 花橘の香をかげば 昔の人の袖の香ぞする」(古今集)
と詠まれてから、橘の香は、かつて愛した昔の恋人を思い起こさせるとされている香りとされるようになりました。

 

「和泉式部日記」の冒頭でも、この橘の花がモチーフにされています。

人妻でありながら、身分違いの恋に落ち、そしてその若い恋人に先立たれた和泉式部。

物語の冒頭はこのような描写から始まります。

 

「夢よりもはかなき世の中を歎きわびつつ明かし暮らすほどに、四月十余日にもなりぬれば、木の下くらがりもてゆく・・・」

(夢よりも儚かった為尊親王との仲を、嘆きわびながら明かし暮らしているうちに初夏の四月十日過ぎにもなったので、葉が茂って木の下がだんだん暗くなっていく。)

 

旧暦の4月10日はちょうど今くらいの季節でしょうか。

亡くなった恋人の弟、敦道親王が「兄宮の恋した人はどうしていらっしゃる」と橘の一枝を届けさせます。

 

和泉式部は、大胆にも

「薫る香に よそふるよりは ほととぎす 聞かばや同じ 声やしたると」
(橘の香りに亡くなった方を偲んでいるよりは あなたのお声を直接お聞きしたい お兄さまと同じお声なのかどうか)

と、返歌するのです。

敦道親王と式部の、新しい恋の始まりでした。

 

 

平野神社の、まさに「木の下くらがりもてゆく」なか、式部と敦道親王の間に漂った橘の香りに身を置くと、ネロリを思わせる高貴な芳香のなかに、ある種妖艶な香りが潜んでいるようにも思えてきます。